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医療関係者の方へ3 step B-TACE

 

初めに

リピオドールエマルジョン(LE)を用いた従来のB-TACEは、LE注入後にジェルを注入する2段階注入であり、2 step B-TACEといえます。 3 step B-TACEとは抗がん剤水溶液、ミリプラチン、ジェルの3段階注入であり、ミリプラチンの作用を最大限活用する塞栓技術です。
ミリプラチンは脂溶性シスプラチンであり、リピオドールと混合した場合、1か月間に含有シスプラチンの5%を徐放します。一方、リピオドールは、腫瘍壊死が達成されない場合は1か月でそのほとんどが腫瘍から放出されます。ミリプラチンを腫瘍内に停滞させるには、ジェルの虚血効果の他、他の即効性の抗がん剤を併用することが理にかなっているといえます。

ミリプラチンと他の抗がん剤を混ぜるべきか否か

ミリプラチンと他の抗がん剤を併用するには複数の方法があります。抗がん剤を水溶液として動注する方法、ミリプラチン・リピオドールサスペンジョンと抗がん剤溶液を混合しエマルジョンとして使用、あるいはミリプラチンと他の抗がん剤粉末を混合しサスペンジョンとして使用する3種の方法が考えられます。
併用抗がん剤はアドリアシン、エピルビシン、マイトマイシンもしくはシスプラチンが代表的なものとして挙げられます。 動脈から投与された抗がん剤は、本来は細胞外液に分布し、更に癌細胞に取り込まれ効果を発揮するものです。リピオドールは基本的には細胞外液には分布できないので理論上は抗がん剤は水溶液として注入することが最も理に適っていると考えております。

リピオドール使用の際の注意事項

リピオドールエマルジョン、サスペンジョン使用の際に最も気を付けなければならないことがあります。それは、肝内動脈枝にリピオドールを停滞させないことです。特に中枢側の肝動脈枝内のリピオドール停滞は絶対に避けねばなりません。血管内に停滞したリピオドールから放出される高濃度の抗がん剤は血管炎を生じ、血管を閉塞させてしまいます。この危険なリピオドール停滞を防ぐ方法は3つあります。
肝動脈枝内のリピオドールをジェルを用いてしっかり腫瘍内に押し込む。 リピオドール使用量は少なめにする。 カテーテル先端を腫瘍まで近づける。 私自身現在は、リピオドール使用量は少なめにするよう心がけております。もちろん門脈枝に流出させないよう心がけております。

3 step B-TACEの適応

現時点で、3 step B-TACEは約10%の患者に適応しております。つまり、その適応をかなり絞っております。これは日立総合病院ではRFAが内科医により上手に行なわれているためで、施設によってはもう少し適応が拡大されるかもしれません。3 step B-TACEの適応は以下の3点を全て満たしていることと考えております。
4cm以内であること:リピオドール上限を7mLとすると、これより大きなサイズの結節の血管床をリピオドールで充満することは出来ません。また4cmを越えると高頻度でGlissonに結節が接してしまいます。
Glissonから離れていること:Glissonに接する結節は太い血管から直接分岐する多数の細い血管から栄養されていることが多く、効率的にリピオドールが腫瘍内に流入しません。非腫瘍部肝実質にリピオドールが多く流入してしまう傾向があります。
数が限定していること:3 step B-TACEは超選択的にカテーテルを挿入して施行することが前提なので、基本的に3個以内です。

バルーンカテーテルの位置決定

塞栓に最適なバルーンカテーテルの位置を決定するには、DSA単独では非常に困難です。コーンビームCT(CBCT)かMDCTを用いたCTAによる血管解剖の完全把握・腫瘍栄養血管の同定を行い、あくまで3Dワークステーション上で最適なカテーテルの位置を決定します。ただし、CBCTはアーチファクトが多いので、CBCTを使用できる環境であってもMDCTを用いたCTAを推奨します。 バルーンカテーテルは許容流量が少なく、中枢側からの造影は不良となります。もともとはこの欠点を補う目的で開発した方法ですが、いまではマイクロカテーテルによるTACEにも必ず併用しております。

先行する抗がん剤水溶液は何が適しているか?

ランダム試験ではありませんが、 3 step B-TACE導入直前はADR+MMC水溶液とミリプラチンとのエマルジョンを用い、2 step B-TACEを施行しておりました。3 step B-TACE導入直後はADR+MMC水溶液をミリプラチンに先行動注しておりました。しかしながら感覚的にあまり差がない印象でした。
先行動注抗がん剤水溶液をCDDPに変更したところ腫瘍制御効果は大幅に改善されました。CDDPはエマルジョンを作成しずらく、この点からも3 step B-TACEに適した薬剤といえます。
しかしながら、不明な点も多数あります。ADR,MMC,CDDPの適正な量が明らかでないことです。更に多量の抗がん剤投与も可能ですが、胆管炎のリスクが上昇する可能性もあります。いまのところ、CDDPは1区域に20-30mgぐらいを目安に投与しております。

結節内の抗がん剤濃度を高めるために

結節内の抗がん剤濃度を高めるためには、なるべく急速に動注することが重要と考えております。ただし、抗がん剤の濃度を高めるためにいたずらに少ない容量の液体で溶解し、濃い濃度で少ない体積の抗がん剤を使用することには抗がん剤の不均等分布を生じる等の不利な点もあります。
あくまで経験則ですが水溶性抗がん剤を20-40mLに溶解して使用することが適切と考えております。
抗がん剤粉末を生理食塩水で溶解するか造影剤で溶解するかはかなり微妙な問題です。造影剤で溶解すると、分布範囲はしっかりと把握できますが、造影剤が抗がん剤の作用に及ぼす影響は全く分かっておりません。初期経験中は造影剤で溶解し、その大まかな挙動が理解できれば、以後は生理食塩水で溶解した方がいいかもしれません。

水溶性抗がん剤の注入様式

血液の混入量をなるべく少量とするために、水溶性抗がん剤、ミリプラチン、破砕ジェルは全て用意したうえで注入を開始します。
バルーンカテーテルは内腔が狭いので、1mLのロック付きシリンジを惜しみなく用います。
抗がん剤は20-50mLシリンジに充填し、3方活栓を連結し、1mLシリンジで1mLの抗がん剤をいっきに動注します。その後直ちに20-50mLシリンジの抗がん剤を1mLシリンジに充填し再び動注、これを繰り返します。
予定量の抗がん剤を注入したら直ちにミリプラチン・リピオドールを透視下に動注します。
最後にジェルを注入します。ジェルはジェルパート1Aを2-5mLの造影剤で溶解し破砕した濃縮したものを推奨します。カテーテル内のリピオドールは濃縮ジェルでそのまま押し出します。そして肝動脈枝内のリピオドールを腫瘍内に押し込みます。これを達成するためにもリピオドールは少なめの使用を推奨します。

バルーン開放時に留意すべきこと

ジェルを押し込み、肝動脈枝にジェルが充填されたことを確認したら、ジェルを充満した1mLシリンジをカテーテルに連結し、いつでも注入できるようにかまえておくことが重要です。この状態で透視下で観察しながらバルーンを開放し、ジェルが末梢に流れていくようなら直ちにジェルを追加注入します。この際、バルーンは開放したままであり、再閉塞する必要はありません。
中枢側から注入した場合、比較的太い肝動脈枝にリピオドールが残存することがありますが、この場合はバルーン開放後にその枝までバルーンカテーテルを挿入し、ジェルをしっかりと注入しリピオドールを押し込みます。

大き目の結節を治療する際のコツ

4cmの大き目の結節の治療の場合、バルーン閉塞すると結節の不均等血流分布がある程度の頻度で生じます。このような場合は、最初に全てのCDDPを動注する必要はありません。CDDP動注とミリプラチンの交互動注を2-5回繰り返せば結節全体にCDDPとミリプラチンをきれいに注入することが可能となります。最初に全てのCDDPを注入すると血流の速い部位のみに分布します。ミリプラチンは通常のエマルジョンよりも粘調なので交互動注により、血流の速い部位の血流がまず停止し、血流の遅い部位にCDDPが分布するようになります。 濃縮ジェルを注入するのはあくまで最後です。
Vascular lakeを生じた場合は、バルーン解放下に非破砕のジェルパートを少しずつ注入します。具体的には、カテーテルのハブにジェルを充填後造影剤で押し出すことを何度か繰り返します(ハブチャージ法)。これでもlakeが消失しない時はジェルフォームを1-2mm角に裁断し、シャーレに準備します。造影剤を混入せず乾いた状態で、ピンセットで2-4粒つまみカテーテルハブに充填し造影剤で押し出します。4cmの腫瘍なら1-2回でlakeは消失します。

 

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