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医療関係者の方へ合併症とその原因

 

合併症例1(RAIB-TACE関連死)

残念ながら、死亡例は存在します。ここ10年でこれ1件なので0.1%未満ではありますが、実際に生じてしまうとかなりきついです。
ベースに心不全が存在していたのですが、3回のselective B-TACE,2回のnon-selective RAIB-TACEを耐えてきたので甘く見ていたところはあるのですが……..。
左葉の(2,3,4)RAIB-TACE施行直後は特に問題はなく帰室したのですが数時間後に血圧低下(60mmHg台)が持続してしまいました。
昇圧剤を使用し、この状態は改善したのですが、後日肝膿瘍(肝梗塞をベースとした)を生じてしまいこれが原因で死亡してしまいました(図)。
 

こうすればよかった。

血圧低下が長時間持続するとどうなるか?塞栓した左葉の動脈血流はperi-biliary plexusを介して供給されますがご存知のように細く蛇行した血管ですので低下した血圧では十分な血液供給がなされず梗塞に陥ったと推測しております。

よって、もっと早く血圧低下に気づいていれば昇圧剤を投与して肝梗塞を防げた可能性はあります。

塞栓術中に神経反射に起因した一時的な血圧低下は頻回に経験し、たいして問題にはなりませんが、この合併症を経験してからは結構気になるようになりました。かといってあまり神経質になる必要もないと思いますが。
 

合併症例2(腫瘍崩壊症候群)

10年のB-TACE経験で、これまで1例のみ腫瘍崩壊症候群を経験しております。しかも高齢患者です。肝機能はchild-Pugh6点でしたが、肝臓の60%以上が腫瘍に置換されておりました(動画)。

この1年前にRAIB-TACEを施行し、7cm越えの多発結節症例でCRを達成していた患者さんです。私も通常の患者さんだったら絶対にTACEは行わないところです。ただ、個人的に思い入れのある患者さんだったので家族・本人と話し合いRAIB-TACEを行いました。その時の条件として腫瘍崩壊症候群をおこした場合は救命処置をとらないというものでした。

RAIB-TACE後翌朝、はたしてショック状態。尿道バルーンからはワインレッドの尿が排液されておりました。たおれた人を目の前にするとやっぱりダメですね。救急部に依頼して救命処置。透析開始。救命できたものの歩行不可能となりました。アルブミンも1台持続しましたが幸いなことに腹水や肝性脳症は発現しませんでした。2か月以上入院の後に緩和病院に転院となりました。

それから2か月後緩和病院を退院して杖歩行で小生にあいさつに来られました。目標としていたことも達成できたと報告を受けました。この時肝臓のCT検査をしてくださいと喉元まで出かかりましたがぐっと我慢。2回目のRAIB-TACE後から17か月後お亡くなりになりました。癌を治すことよりも人生目標を達成することをかなえる治療を望まれた患者さんで、運よく(私および患者さん)期待に応えることが出来たと自負しております。
 

こうすればよかった。

よく言われている通り、腫瘍体積の大きな症例にはTACEを控えるべきなのでしょう。何回かに分けてTACEを施行するという戦術もありうるが、この症例の場合は進行が早く、しかもTACE中に腫瘍内出血(vascular lake)を生じたので分割TACEは不可能でした。動注リザーバーあるいは動注を繰り返すという戦術はありかもしれないがこれも効きすぎると腫瘍崩壊症候群のリスクがあります。

合併症例3(肝動脈瘤・破裂)

肝左葉の巨大腫瘍を切除後、限局性の再発にリピオドールTACEを施行し、制御できたものの壊死した癌結節に膿瘍が生じた。原因は胆管空調吻合であり、食残が胆道に逆流していることが原因であった。膿瘍はドレナージで対処。その後お決まりのコースで次は残肝に無数の再発。肝全体にRAIB-TACE施行。この時は膿瘍は生じなかったが、S6の結節が巨大化。主に皮膜動脈からの再発で、4回目のTACEは選択的RAIB-TACEを施行した。

これは膿瘍を生じたのでドレナージチューブ留置。これによりほぼCRの状態を得たが、1か月後上部消化管出血を生じた。内視鏡では十二指腸出血であったがAGにて後区域枝に動脈瘤が形成され、破裂していた。もちろん得意のコイル塞栓でTAE,止血に成功した。

動脈の形成原因であるが、この場所でバルーンを膨らませたことはなく、バルーン拡張による機械的損傷ではなく食物残差逆流による感染性と考えられた。RAIB-TACEにより胆道粘膜の脱落が生じ感染を促進したと考えている。さすがにこの後はTACEを行うことができず、HCC再発により患者さんは亡くなられた。
 

こうすればよかった。

胆道気腫は膿瘍のリスクであることはよく知られている。しかし全例に生じるわけではない。韓国からの報告では胆道気腫症例の約25%に生じるとされる。自験例ではこれまで3例の胆道気腫症例に施行し、膿瘍・胆道感染はこれ1例のみです。動注リザーバー治療でも胆道気腫症例は相対禁忌と考えている術者が多いようである。一口に胆道気腫といっても食物残差の逆流が原因であるならTACE後はいっそ禁食にしてしまえばいいのか?あるいは胆汁排泄性抗生剤を服用させ続ければよかったのか?
 

症例 50代男性

RAIB-TACE翌日に患者診察のため病棟を訪れたところ、廊下でスリップ・転倒。
膝蓋骨を骨折。患者ではなく術者のTACEに伴った合併症でした。チャンチャン。
 

こうすればよかった。

クロックスでなくミドリ安全にしておけばよかった。

 

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