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医療関係者の方へGlisson近傍結節に対するRAIB-TACE

 

初めに

Glissonに接している結節は離れた結節と比較し、リピオドールを用いたTACEによる制御は困難です。この原因は腫瘍栄養血管の構造の違いに起因しております。Glisson近傍結節の栄養血管は太い基幹動脈から多数の細い栄養血管が直接分岐していることが多く、全ての栄養血管にカテーテルを挿入することが困難であること、また中枢側からリピオドールを注入してもこういった細い血管にリピオドールが流入しにくいからです。一方RFAでは胆道障害のリスクがあるためGlissonに接した結節は治療対象となりにくいです。リピオドールTACEにとってもRFAにとっても治療し易いのはGlissonから離れた結節ですが、一般にはRFA治療が優先されるために、TACE治療にはGlisson近傍結節が多く含まれることになります。日立病院では内科医がRFAを熱心に行っていたので、TACE症例はGlisson近傍結節の割合が多かったと思います。

全TACE症例中、リピオドール(ミリプラチン)を用いた標的B-TACEはわずか10%でした。Glissonから離れた結節は、そのサイズにもよりますが、1-3本の栄養血管が直接結節内に侵入しており、これらの血管にカテーテルを挿入できれば良好な制御が期待できます。現在はMDCTを用いたCTangiographyで栄養血管は容易に同定できますのでGlissonから離れた結節は簡単・確実にTACE治療できます。

Glisson近傍結節のリピオドールB-TACE治療の際に常々感じていたことは、結節に十分リピオドールを注入するには結節から離れた肝実質に多量のリピオドールが流入してしまうことでした。B-TACEは肝実質へのリピオドール流入を抑制しますが、ある種の違和感・手技改良の必要性を感じておりました。

当初は多発結節に対しRAIB-TACEを導入しましたが、多発であるが故にGlisson近傍結節も含まれているわけで、これらが良好に制御されるのを観察し、Glisson近傍結節の標的治療にRAIB-TACEを導入しました。

まずはリピオドールB-TACEで制御できなかったGlisson近傍結節を治療対象としました。次に門脈は開存しているが腫瘍圧迫により軽度の胆管拡張を生じている結節を治療対象としました。これらのほとんどの結節は良好に制御され、現在ではGlisson近傍結節に対してはリピオドールB-TACEは行っておりません。

Spiegel葉の結節はどちらに分類されるか?

かつては肝癌結節を中枢結節と辺縁結節に分類し、中枢側結節はリピオドールTACEで制御しずらいとした報告もありました。Spiegel葉に位置する結節は中枢側に分類されTACE制御困難と分類されていたようです。
しかしながらSpiegel葉の結節の栄養血管構造はGlissonから離れた結節と同じです。よって、栄養血管さえ同定できればマイクロバルーンカテーテル挿入は容易であり、MDCTを用いたCTangiographyを導入すればその制御は容易です。Spiegel葉の結節は、栄養血管構造の観点からはGlissonから離れた結節に分類されるべきです。

Spiegel葉の結節に対しRFA針の穿刺は困難ですので、リピオドールB-TACE(3 step B-TACE)の良い適応と考えております。

TACE制御を困難にする血管構造

先に述べたよう、太い基幹動脈から細い栄養血管が直に複数分岐している血管構造はリピオドールや塞栓物質の注入を困難にします。その他塞栓を困難にする血管構造は、蛇行した血管です。こういった血管は、高度肝硬変による肝動脈枝のコークスクリュー変化の他、TACEによる血管炎後に認められます。蛇行血管に効率的に注入できる薬剤形態はリピオドールのような粘調なものは不適格で血液とおなじ性状のもの、すなわち抗がん剤のサラサラした水溶液のみと考えます。RAIB-TACEではジェルも使用しますがその目的は虚血効果の他、注入した抗がん剤の洗い出しを遅れさせ高濃度の抗がん剤に長く癌細胞を接触させること、バルーン閉塞時の薬剤不均等分布を是正すること、またジェルが侵入できない細い栄養血管に高濃度に薬剤を注入させることであります。

RAIB-TACEはもともとGlisson近傍結節を制御する目的で考案したものです。その作用機序・理論を理解するには肝臓がん結節の栄養血管の構造についての理解が必須です。これまで多用していたリピオドールB-TACEとは、栄養血管の構造について理解し、RAIB-TACEを誕生させるためにあったといっても過言ではありません。

RAIB-TACE作用機序

肝臓内には多数の様々な側副路が存在しています。通常のマイクロカテーテルを用いてリピオドールTACEを施行する際にはあまり意識する必要はありませんが、リピオドールB-TACEやRAIB-TACEを正しく行うには側副路を理解し、その存在を意識する必要があります。

Glisson近傍結節を治療するには亜区域枝あるいは区域枝の起始部近傍でバルーン閉塞を行う必要があります。
肝動脈枝近位部でバルーン閉塞を行うと、communicating arcadeが側副路として機能します。バルーン閉塞部より遠位の血流は大幅に低下しますが停止はしません。この状態で抗がん剤を動注すると抗がん剤は側副路から血流を受けていない部分(枝)に集中します。この不均等分布を是正する技術こそがRAIB-TACEなのです。

抗がん剤の動注後に直ちに少量の希釈ジェルを注入するとジェルも側副路から血流を受けていない部分に集中し、この部分の血流は低下・停止します。次の抗がん剤の動注の際には少量の血流を側副路から受けている部分に集中し、ジェルもこの部分に集中します。抗がん剤の動注と希釈ジェルの動注を繰り返すことにより最終的には多量の側副血流を受けている枝も塞栓され、癌結節の細胞外液腔に高濃度の抗がん剤がパッキングされた状態での塞栓が達成されます。

バルーン閉塞した状態で、バルーンより遠位の主だった肝動脈枝全てに希釈ジェルを含んだ造影剤が漂った状態で注入は終了します。最後は抗がん剤動注で締めくくるのか、ジェルで締めくくるのか?今のところは抗がん剤動注で締めくくるようしております。その根拠は、Glisson近傍結節を栄養する最も細い血管はDSAや透視では視認できず、またジェルのサイズよりも細く塞栓できないと推測しているからです。画像上確認できる血管にジェルが塞栓された後に画像上確認できない細い枝に抗がん剤を集中させることが重要と考えております。バルーンの開放は、抗がん剤の洗い出しを遅延させる目的で、最終動注が終了して数分後に行うようしております。

バルーン開放後はDSAを行い腫瘍濃染の残存とVascular lakeの有無を確認します。腫瘍濃染残存の場合は、その責任血管まで選択的にバルーンカテーテルを挿入し、RAIB-TACEを行います。Vascular lakeはバルーン開放下で、非破砕1mmジェルパートを用いて塞栓します(7cm超巨大HCCの項参照してください)。
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