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医療関係者の方へRepeated alternate infusion B-TACE (RAIB-TACE)

 

初めに

RAIB-TACEは聞きなれないと思いますが、B-TACEの一種です。というか、B-TACEの大本命と考えております。しかも、リピオドールを全く用いないB-TACEです。B-TACEといえば、リピオドールの腫瘍への取り込みを促進するということが代名詞でしたが、現在ではほとんどの症例でRAIB-TACEを施行しております。つまり、ほとんどの症例でリピオドールは使用しておりません。

超選択的TACEに代表されるよう、腫瘍壊死効果を高めるためには腫瘍近傍の肝実質も含めて強力なTACEを行うことが重要であると、かつては強く信じておりました。2008年にB-TACEを開始して以来、リピオドールエマルジョンを用いたB-TACEを主に行っておりましたが、肝機能が低下していたり、多発結節症例にはこのような大量のリピオドールエマルジョンを用いた強力なTACEを施行することは出来ませんでした。苦肉の策として、ごく少量のリピオドールを用いるか、あるいはリピオドールを用いず水溶性抗がん剤のみをもちいたB-TACEを時折施行しておりましたが以外にも有効でした。当時はリピオドールエマルジョンはTACEに必須と強く信じていたためリピオドールを用いないB-TACEを深く掘り下げて考察するということはありませんでした。

しかしながら、リピオドールエマルジョンを用いたB-TACEを繰り返していると肝動脈枝が徐々に変性し、TACEの効果は減少し、逆に痛み等の副作用は増大するといった欠点が徐々に浮き彫りとなってきました。また、球状塞栓物質はリピオドールを併用しませんが、局所制御は同等であるというデータも発表されるようになりました。

リピオドールは優れた薬剤運搬体であると同時に末梢細血管に対する強力な塞栓物質ですが本当に必要なのかといった疑問も芽生えました。
RAIB-TACEが高い有効性を示す理由は、ひとえにCDDPが肝癌細胞に対し非常に効果が高いということにつきると思います。しかしながらCDDPはリピオドールとのエマルジョンを作成しずらいこと、またCDDPを微細粉にして作成したサスペンジョンは肝動脈枝内に残存したときに血管炎を生じ、肝動脈の変性の原因となりうることから主流にはなりえなかったようです。つまり、リピオドールの使用がTACEの前提であったためにCDDPの長所が長らく認識されなかったのではと思います。

様々な周辺事情の変化から徐々にリピオドールの呪縛が解け、原点に返り、TACEのメカニズムについて思いを巡らせ、RAIB-TACEという方法にたどり着くことが出来ました。

もちろん、リピオドールを用いたTACEも施行しております。しかしエマルジョンではなく、ミリプラチンを主体としたもので、少なめに用いております(3 step B-TACE)。

RAIB-TACEの真のメリットは、優れた局所制御よりも、痛みが少なく入院期間が短くできるということにあると思います。これは直ちに実感できます。大き目の結節をリピオドールTACEで治療すると、翌日は患者さんはかなりつらそうにしていますが、RAIB-TACEの場合はかなり楽なようです。
球状塞栓物質は痛みが少ないということをよく耳にしますが、RAIB-TACEも同様で、塞栓後の痛みはリピオドールTACEと比較しかなり少ないです。球状塞栓物質を上回るメリットとして、ジェルパートの生体吸収性が挙げられます。球状塞栓物質は永久塞栓となるので、腫瘍濃染が消失し、かつ亜区域レベルの血管開存が保たれているぎりぎりの塞栓が必要で、高度な技術が要求されますが、生体吸収性のジェルパートはやや強めの塞栓が可能で、塞栓強度のセーフティーマージンが広く、技術的習得が容易です。

一方、ジェルパートは抗がん剤含浸は不可能ですので、バルーン閉塞下に高濃度の抗がん剤を動脈内に直接送り込みます。長時間の抗がん剤接触という点では抗がん剤を含浸させた球状塞栓物質にはかないませんが、癌結節内の抗がん剤濃度はRAIB-TACEの方が高くなると考えております。濃度依存性の抗がん剤の場合はRAIB-TACEの方が有利と思われます。

何故リピオドールが広まったか?

私が30年以上前にTACEを初めて習ったときは、アドリアシン・マイトマイシン溶液で作成したリピオドールエマルジョンを動注し、はさみで1-2mm角に裁断したジェルフォームを塞栓するというものでした。当時はマイクロカテーテルはなく、胆嚢動脈もろとも片葉もしくは全肝を治療しておりました。

当時からリピオドールは本当に必要なのかということを同世代の放射線科医と話題にしておりましたが、知識が足りないため十分な議論もできず、かといってリピオドールを用いないTACEを行うほどの勇気もなくダラダラとリピオドールを使い続けておりました。

はさみでジェルフォームを裁断するのは面倒くさく、当時の上司にジェルパウダーをどうして用いないのかということを質問したところ某施設でリピオドールエマルジョンとジェルパウダーを併用したところ高頻度で胆管炎を生じたので用いないとのことでした。もし、この当時、リピオドールを用いず抗がん剤の動注とジェルパウダーによる塞栓が行われていたなら現在のTACEの標準手技は全く異なったものになっていたかもしれません。
今から考えると、1-2mm角に裁断したジェルフォームは腫瘍栄養血管を塞栓するには明らかに大きすぎます。腫瘍内に到達することはほとんどなく亜区域から亜亜区域ぐらいの肝動脈枝内にとどまっていたと推測します。この場合、胆管周囲の側副路から血流供給が行われ癌結節の十分な虚血を得ることは出来ません。しかしリピオドールを用いた場合、亜亜区域に到達したジェルフォーム角は血流の完全停止を達成は出来ませんが、側副路からの押し込み圧は50mmHg内外に低下させるため、腫瘍からのリピオドールの排出を防止する効果があったと推測されます。ジェルフォーム角は、リピオドールと組み合わせて初めて効率的な阻血を達成できたのです。

現在は肝の微小血流や肝内側副路等の知見が進歩し、30年前と比較すると科学的にTACEのメカニズムについて考察することができます。
RAIB-TACEは、リピオドールを用いたB-TACEについて考察すると、そのメカニズムを理解しやすくなると思います。また科学的に理解することが手技に反映されると信じております。

RAIB-TACEのメカニズム

RAIB-TACEのゴールは、細胞外液腔に高濃度の抗がん剤をなるべく長時間停滞させ、腫瘍栄養血管にジェルを塞栓することです。何故抗がん剤の動注と希釈ジェルの動注を繰り返す必要があるのか?この点を正しく理解することが必要です。

バルーンカテーテルは血流を低下(停止ではない)させ腫瘍内の抗がん剤濃度を上昇させますが、同時に血流の不均等分布を生じます。これは多数の肝内・肝外側副路が存在しているためです。中枢側から動注する場合に特にこの不均等分布が生じやすくなります。

抗がん剤と破砕ジェルの動注を交互に繰り返すことはこの不均等分布を解消するとともに、ある程度時間をかけて注入するという目的もあります。CDDPを経静脈的に投与する場合は30分以上時間をかけることが推奨されております。これは静脈内の血中濃度が急激に上昇することを防ぐ目的と理解しております。

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