腫瘍栄養血管の同定メイン画像

医療関係者の方へ腫瘍栄養血管の同定

 

初めに

腫瘍栄養血管の同定はB-TACEのみならず、全てのTACEにおいて非常に重要です。皆さまはどうやって同定していますか?
2011年にコーンビームCT(CBCT)を導入してからはDSAの施行回数はめっきり減少しました。しかし2013年からはCBCTもやめてしまい、カテーテルを腹腔動脈あるいは上腸間膜動脈に挿入し、CTA(CTA for detection of tumor-feeding artery, TF-CTA)を撮影して腫瘍栄養血管を同定しております。現在ではほぼ全ての症例にTF-CTAを施行しております。
もし、DSAを肝動脈の中枢側から随時行い、末梢側に進め、何本かの枝にマイクロカテーテルを挿入してDSAやCTを施行し、腫瘍濃染を確認して腫瘍栄養血管を同定しているなら時代遅れといえます。
内腔が狭いため十分な造影が行えないことはマイクロバルーンの欠点です。これから述べるTF-CTAは、本来はマイクロバルーンカテーテルの欠点を補うために開発したものです。しかしTF-CTAは、この欠点を克服するのみならず、全てのTACEを大きく進歩させる可能性を秘めております。またTF-CTAは肝動脈から分岐する肝外動脈枝(右胃動脈や副左胃動脈、臍動脈等)も良好に描出します。

腫瘍栄養血管とは?

腫瘍栄養血管とは、すなわちHCC結節に侵入し、血液を供給している血管です。よって結節と栄養血管は必ず結合しています。DSAでは血管のオーバーラップが生じ、DSA画像上で血管と腫瘍の結合を認めても、必ずしも栄養血管とは限りません。また、DSAでは腫瘍の濃染そのものがはっきりしないことがあります。
しかしTF-CTAを用いれば、非常に高い確率で結節はもちろんのこと、結節に結合している細い栄養血管もはっきりと確認することができます。理論的にも経験的にも陽性的中率はほぼ100%と考えております。よってTF-CTAで検出した栄養血管には必ずカテーテルを挿入してTACEを施行する必要があります。
栄養血管の太さは腫瘍径と相関があります。2-3cm径の腫瘍の場合は大体200-300ミクロンぐらいです。この細い血管をCT画像上明瞭に描出する必要があります。これを目標として造影剤の使用方法、CTの撮影タイミングを最適化する必要があります。

TF-CTAと従来のCTHAの違い

現在はEOB-MRIがあるので全く行っておりませんが、CTHA(CT during hepatic arteriography)はかつて肝切除前の検査としてCTAPとともにルーチンで行っておりました。その主な目的は肝切除前の小結節の検出です。造影剤は半分から1/3の濃度に希釈し、注入終了後に撮影を開始しておりました。検出できる結節も5mm内外が限界なので3-5mm厚でCT画像を再構成しておりました。
しかしTF-CTAの目的はCTのスライス厚よりも細い0.2mmの血管の描出です。よって造影剤は原液を使用し、スキャン中も動脈のCT値を維持するために造影剤を注入し続けます。当然、スライス厚は最薄(0.5-0.63mm)で再構成間隔もスライス厚と同じかその半分です。
スライス厚よりも細い血管が描出できるのか?という疑問は当然です。こればかりは自分で経験していただくしかありません。造影剤の原液をそのまま用いることにより細い血管を明瞭に描出できます。

何故カテーテル先端は肝動脈でなく腹腔動脈・SMAなのか?

腹腔動脈あるいは上腸間膜動脈にカテーテルを留置してCTAを行うことの理論上のデメリットは、門脈からの造影剤還流が肝動脈枝、腫瘍栄養血管の描出の邪魔になることです。このデメリットを克服するためには後述の造影プロトコールとCTの性能が重要です。

一方、メリットはたくさんあります。

  1. カテーテル留置が簡単。
  2. 第2相の撮影により門脈の描出が可能である。よって、腹腔動脈あるいは上腸間膜動脈のDSAは不要。
  3. 大網動脈、下横隔膜動脈等(腹腔動脈から分岐している場合のみ)の側副路の同時評価が可能。
  4. カテーテル反跳・移動のリスクが極めて低く、患者をCT室に移送して撮影することが可能。
  5. 4Frカテーテルからの注入なのでCT用インジェクターの使用が可能。

CT室への患者移送の手間さえ惜しまなければアンギオCTがなくてもTF-CTAを行うことが出来、しかもCT室にアンギオ用のインジェクターを備える必要はありません。

余談(腹腔動脈・SMAでTF-CTAを施行するようになったきっかけ)

薄いスライス厚でのCTA画像上で腫瘍濃染と細径血管の結合を直接検知し、腫瘍栄養血管を探すようになったのは2010年からで、当時はコーンビームCTを用い、肝動脈から造影剤を注入しておりました。前述のとおり、バルーンカテーテルの許容流量は少なく、かといってマイクロとバルーンの2本を使用すると保険で査定される可能性があり、苦労をしておりました。
とある日、4Frカテーテルを総肝動脈に留置し、CBCTを施行したところ、呼吸の具合でカテーテルが腹腔動脈に移動してしまいました。やりなおしかなと思いましたが、画像を確認したところ門脈に造影剤は還流しておらず栄養血管は十分に同定できました(メチャクチャ嬉しかったです)。
この後からはCBCTは全てCAもしくはSMA経由で施行するようになりました。
CA・SMA経由でCBCTを施行するようになってしばらくして、CTインジェクターで造影剤を注入できるなら、CT室に患者を移送して撮影できるのではというアイデアが浮かびました。当時、CBCTの画像から栄養血管を探すのは放射線技師の仕事でしたが、MDCTと比べ画質が悪いので苦労をかけていました。患者移送の話をしたところ2つ返事で合意完了。MDCTでTF-CTAを施行して画像をみたら、画質があまりに素晴らしいのでCBCTはやめようと即座に合意しました。

TF-CTAの撮影方法・条件

まずは、経静脈造影CTもしくは造影MRIを参照し、4FrカテーテルをCAもしくはSMAに留置するか決定します。
カテーテル留置後、DA(DSAではない)を行いカテーテルの位置確認と造影剤の流量を決定します。造影剤はイオヘキソールよりも低粘度なイオパミドール300がお勧めです。CTインジェクターを用いた場合、4Frカテーテル流量の上限は5mLです。テスト注入で造影剤があふれそうな場合は流量を減らします。吸気での撮影を推奨します。
CTは64列以上で、肝臓全体が3秒以内で撮影できることが前提です。ピッチは早めに設定し、時間分解能を上げることが推奨されます。日立製シナリアの場合、0.35秒でガントリーを回転させ、時間分解能を向上させるためにピッチは0.8が推奨されます。
第1相目の撮影は造影剤注入開始後6-7秒後に行います。
第2相目の撮影は造影剤注入開始後20秒後に行います。

TF-CTA読影・画像処理

TF-CTAを活用するには3Dソフト・ワークステーションの使用が絶対に必要です。私どもはVincent(Fuji film)を使用しております。ただし特別なオプションは全く必要ありません。
次に必要なことは、ワークステーションで作成した画像をAG室内で透視画像と同時表示できることです。DSAやDAを参照しながらワイヤー・カテーテル操作を行うように、TF-CTAで作成した3D画像を参照しながらワイヤー・カテーテルを末梢に進めていきます。随時、3D画像を作成するのは放射線技師の役割です。
造影剤原液を使用しているので血管のCT値は骨よりも高く、3D画像から骨構造を取り除く必要はありません。よって速やかに3D画像を作成することが出来ます。
TF-CTAの画像でまず確認することは目標結節です。
次にthin slice上で目標結節に接する、あるいは極めて近接する血管にタグを標識します。
標識完了後、MIPで全体像を確認します。どの位置から塞栓するか決定します。
これらの作業は10-20分で完了します。もちろん経験値が増せばもっと早くなります。

患者を移送して撮影する際の工夫

患者を移送してTF-CTAを撮影する場合は、息止めは吸気であることが前提です。
移送する場合は、微妙にカテーテルの位置がずれる可能性があり、万一先端が細い動脈に迷入した場合は血管破裂のリスクがあるからです。カテーテルの形状も、側孔付きで、先端が緩やかにカーブしたJ3タイプ(メディキット)を推奨します。
カテーテルを留置した後は、エクステンションチューブと3方活栓をカテーテルに取り付けます。エクステンションチューブは太いもの(50cm長)を推奨します。細い1mのチューブは許容流量が減少します。
患者をCT室に移送し、2本目のエクステンションチューブにシリンジを連結します。エクステンションチューブ同士を結合し、3活からエア抜きをします。
TF-CTA撮影終了後AG室に移送。エクステンションチューブを取り外し、被い布をもう1枚かぶせます。カテーテルは衛生的に保たれているのでそのままTACEに使用します。

コーンビームCT(CBCT)との比較

横断画像を撮影するために設計されたCTと本来はAG撮影のために設計されたCBCTを比較するのは酷かもしれません。そもそも、アスリートがいくら速く走ろうとも、走るために生まれた馬にはかなわないのは道理で、CTの画質が優れているのは自明です。
問題は、CBCTが微細血管の描出を理論上担保しているかどうかということです。
この課題に対する私の結論はNoです。理論上も経験上もです。もちろん、CBCTは有用な機械であり、私自身も2年間は張り切って使用しておりました。経験的には60%の症例で、CBCTは明瞭な微細血管画像を描出し、更にDSAの情報を付加することにより80%の症例で有効であると考えております。しかし、残り20%の症例ではCBCTの無力さが際立ってしまいます。この20%の症例とは、息止めが不良な患者、中枢側結節症例、体格が大きい(80kg以上)患者です。
人間とは贅沢なもので、いったんCTの画像に慣れてしまうと、CBCTに戻ろうとは思わなくなります。

CBCTの理論上の最大弱点

DSAを撮影しているときに、患者さんが最初から最後までぴったりと息を止めていることは比較的稀です。肺の空気が徐々にリークし、カテーテルや結節の位置が徐々に数ミリ移動することがしばしばあります。
CBCT撮影時間の5秒間の息止め中に3mm動いたと仮定します。1mm未満の径の血管を描出するために再構成スライス厚を1mmに設定した場合、十分な質の微細血管像を得ることは出来ません。
0.35秒スキャンのMDCTでは最短の時間分解能は0.2秒です。息止め1秒間あたり1mm移動すると仮定します。この場合CTスライス撮影あたりの移動距離は0.2mmであり、CTのスライス厚が0.63mmであることを考慮すると十分な画質の微細血管像を得ることができます。もちろんTF-CTAの撮影中に肝臓は徐々に移動しているので肝臓の形状は少しゆがみますがカテーテルナビゲーションのMIP画像には全く支障はありません。

16列CTを装備しているアンギオCTをもっと活用してみませんか?

16列CTを組み合わせたアンギオCTは日本国内に広く普及していると思います。16列CTでも時間分解能は1秒未満に設定できるので撮影方法を工夫すればCBCTよりも明瞭な微細血管画像を提供できると思います(やったことはありませんが)。最も重要なことは撮影中に造影剤原液を注入し続けることです。我々の経験上、腹腔動脈から5秒間の先行注入が行われれば腫瘍内に造影剤が流入する(腫瘍濃染を得る)ことが判明しています。
Z軸方向の分解能は犠牲になりますが、コリメーションは2cm幅として、テーブルを2-3cm/回転で動かし、0.8秒回転でスキャンすれば5秒間で全肝を撮影できます。
あるいはカテーテルを総/固有肝動脈に留置して、1cm幅でTF-CTAを行えば撮影時間は長くなりますが、門脈に造影剤が流入することはないので、iso-voxelデータのTF-CTAを得ることが出来ます。このときの造影剤も原液が推奨されますし、注入時間は撮影時間プラス5-7秒とし、撮影開始は注入開始から5-7秒が最適と考えられます。

血管造影装置を更新するなら…..

アンギオCTの欠点(高価であること)を克服できるかもしれない可能性を有しているCBCTですが、私自身は64列以上のMDCTを装備したアンギオCTがTACEに最も適した機械と考えております。新たに血管造影装置を更新するならアンギオCTが絶対にお勧めです。ぼろいAGとピカピカの80列以上のMDCTを組み合わせたアンギオCT….。どのメーカーとは言いませんが。
いずれにせよ、装置更新の時にははっきりと結論を出す必要があります。どちらが優れているのか、CBCTあるいはアンギオCTか。

結論

経済的に許されるなら64列MDCTを組み合わせたアンギオCTがベストバイ。
熱意があるなら、CBCTが使用できる環境であっても患者をCT室まで移送する(私はそうしております)。
金も熱意もないならTACEは行わない。

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