何がtace制御を困難にするか?メイン画像

医療関係者の方へ何がtace制御を困難にするか?

 

初めに

現在、私が行っているB-TACEの方法は2種類あります。3 step B-TACEとRAIB-TACEです。具体的な方法はそれぞれ後に詳述しますが、ここでは、肝癌結節の数、位置、大きさについて分類し、それぞれに最適なB-TACEの方法を提案したいと思います。
肝癌治療の柱は2本です。肝切除術とRFAであり、B-TACEは根治性という点ではこの2つには及びません。よって、B-TACEの適応は、肝切除とRFAの適応がないということからスタートします。もちろんRFAのスキルレベルによってもB-TACEの適応には施設間で異なると思います。RFAや手術が施行しやすい結節はTACEによる制御も容易です。逆に言うとRFAや手術をしっかり施行している施設でのTACE症例は、いわゆるTACE困難症例の頻度が高いということになります。
肝癌結節の血管構築は、水溶性抗がん剤およびリピオドールの挙動を考察するうえでとても重要です。特にGlissonに接する結節の血管構築は特殊であり、TACE技術の改良の余地はまだまだ存在していると考えております。

肝癌結節分類

  1. Glissonに接しているか、離れているか。
  2. 4cm以上か、以下か。
  3. 多数結節か、否か。

以上の3要素がTACEの適応・方法に関して重要と考えております。PVTTも重要な要素ですがここには含めません。

Glissonからの距離

Glissonに接する結節に対するRFA治療は胆道障害のリスクを伴うためTACEが適応されることが多いです。しかしながらTACEにとってもGlissonに接する結節は治療を行いにくいものです。この認識がとても重要です。つまり、RFAを熱心に行っている施設では、TACEが適応される結節は、TACEによる治療が困難なものが多いということです。TACEの有効性に関し、施設間で認識の差が生じる原因のひとつです。
Glisson近傍の結節の場合、太い血管から細かい血管が多数分岐し、腫瘍を栄養することが多いです。これらの細い血管全てにカテーテルを挿入することは技術的にとても困難です。
一方、Glissonから離れた結節の栄養血管の数は少なく、超選択的カテーテル挿入による標的TACEは容易で良好な制御が期待できますが、逆にこれらの結節はRFAの適応であることが多いです。
つまり、多くの施設では、Glissonに近接した、やや大きめの、TACEによる制御困難な結節に対してTACE治療が行われていることになります。

4cm以上か、以下か

腫瘍が4cmを越えると、経験上結節はGlissonに接している頻度が高くなります。また、ミリプラチン・リピオドールの使用上限量を7mLとした場合、腫瘍体積が大きいために結節全体にリピオドールを充分に充填することが困難となります。
さらに肝外側副路から栄養されたり、TACE中にvascular lakeを生じたり、あるいは肝内多発転移を伴っている頻度が高くなります。
更に7cmを越えると、多くのIVRistが制御は更に困難になると考えているようです。
4cmを越える結節は、現在はリピオドールを用いず、新しいB-TACEであるRAIB-TACEを主に施行しております。

多数結節か否か

多数結節の定義は難しいですが、標的治療をあきらめるという観点から考えると片葉5個以上と考えております。
多数結節が存在していると、いくつかの結節はGlissonに接している確率が高くなります。もちろん、各々の腫瘍栄養血管を選択しての高濃度の薬剤注入は技術的に不可能となります。
もし、多数結節を制御できる広範囲に対するTACE技術が開発されたなら、TACEの適応を大きく変化させる可能性を有しているといえます。なぜなら、そのTACE技術による肝障害程度は軽くなければならず、しかも多数結節が制御できるなら限定領域の標的TACEにも応用可能だからです。多数結節を制する者はTACEを制するといえます。
肝障害が少なく効果が高いTACEの方法として、私自身は現時点ではRAIB-TACEが最も理想に近い方法と考えております。

リピオドールの功罪

B-TACEの役割はあくまでRFAで治療困難な結節を治療することにあります。前述のようにRFA困難な結節はTACE困難でもあります。実際カテーテルをできる限り末梢に進めてリピオドール(ミリプラチン)を用いてB-TACEを行う頻度は、現在では全症例のたった10%です。
残りの90%はいわゆるTACE困難症例です。これらの症例に対し、現在はリピオドールを用いないRAIB-TACEを施行しております。
リピオドールを用いないRAIB-TACEはまずは肝機能不良例、多数結節例に導入しました。また、球状塞栓物質ではリピオドールを用いずとも良好な腫瘍制御を達成しており、リピオドールエマルジョンはTACEに必ずしも必要ではないことを認識させてくれました。このこともRAIB-TACEの適応拡大につながりました。

リピオドールTACEの最大の問題点

何度も述べておりますが、太い血管から直に多数の細い血管が分岐する腫瘍栄養血管構造こそがリピオドールTACEに対する最大障壁と考えております。
流体力学的には、リピオドール油滴は表面張力が高く形状が変化しにくいので、太い血管から直に分岐する細い血管に侵入できないのです。当たり前ですが、血液はあらゆる腫瘍栄養血管を還流することができます。よって血液と同等あるいはそれ以下の粘調度の抗癌剤なら問題なく腫瘍細胞に迫ることができます。表面張力が低い(ない)抗がん剤とは、すなわち抗がん剤水溶液です。抗がん剤水溶液こそがあらゆる形状・構造の腫瘍栄養血管に侵入できるのです。
よってTAEを併用することにより水溶性抗がん剤を高い濃度で腫瘍内に停滞させることを目指すことは新しいアプローチですが理に適っていることです。この方法こそがRAIB-TACEです。これまでのリピオドールを用いたB-TACEは肝内の側副血行路や前述の腫瘍栄養血管構造を理解・解明し、RAIB-TACEを開発するためにあったのだと強く感じております。
RAIB-TACEにとって更に幸運だったのは、シスプラチンが肝癌細胞に対し非常に有効であるということです。
RAIB-TACEとはRepeated alternate infusion B-TACEの略です。その具体的な方法はGlisson近傍の結節、多発結節、大結節のTACE項目で詳述します。

angioarchitechture proximal glisson

Glissonに近接する結節の場合、多数の細い血管が直に近位部の太い血管から分岐し結節を栄養しているため、いわゆるsuperselective TACEは困難である。

何がTACE制御を困難にするのか?

太い動脈から細い動脈が分岐する場合、リピオドールの表面張力によりリピオドールは型崩れすることがないので細い血管に侵入することが出来ない

 

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