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病院の紹介臨床倫理に関する指針

○臨床倫理綱領

患者様の基本的人権はもとより、当院の「理念・基本方針」、「患者様の権利と責務」などに基づき、すべての職員が臨床における様々な問題に対応し、患者様にとってもっとも望ましい医療を適切かつ十分に提供することを目的として、当院における臨床倫理に関する指針を定めます。

○基本原則

(1) 患者様の最善の利益を追求した医療を実践します。
(2) 患者様には良心をもって平等に接し、その人格や価値観を尊重します。
(3) 患者様の立場に立った対応を常に心がけ、協同して良好な信頼関係に基づいた医療を行います。
(4) 情報を正しく伝え、十分な説明と同意に基づく自己決定を尊重します。
(5) 科学的根拠に基づいた、安全・最良な医療を行うよう努めます。
(6) 個人情報やプライバシーを保護し、職務上の守秘義務を遵守します。
(7) 関連法規を遵守し、医療倫理の諸指針を尊重します。

 

○具体的な倫理課題への対応方針

(1)意識不明・自己判断不能な患者様への対応について

意識不明や判断能力のない患者様においては、ご家族など適切な代理人の同意を得て治療に必要な判断と決定を行います。
なお、適切な代理人がいない場合や、生命の危機に係わる緊急事態で家族関係者に連絡がつかない場合は、「「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省 平成 30 年 3 月改訂版)」に基づき、多種職で検討し、患者様にとって最善の利益となる治 療を行います。
ここでいう代理人とは、患者様の価値観、人生観を十分に理解し、患者様の立場に立って判断できる場合にのみ代理人となりうるという原則に従います。

 

(2)検査・治療や入院の拒否、指示不履行への対応について

患者様が自律的に判断できる場合、検査・治療・入院などの必要性および利益、実施しない場合の不利益等について十分な説明を行っても医療行為を拒否した場合には、患者様の自己決定権を尊重します。
ただし、いかなる場合も積極的な安楽死や自殺幇助は認めません。医療者と患者様の意向が対立する場合には、多種職による協議で検討し、判断が難しい場合には病院倫理委員会等で審査します。

 

(3)輸血拒否患者様への対応について

輸血を拒否する信念は人格権を構成する信教の自由に基づく権利であることを理解し,尊重します。その上で、宗教上の理由などから輸血を拒否される患者様には、相対的無輸血(ご本人の意志を尊重して可能な限り無輸血治療に努力しますが、輸血以外に救命手段がない事態に至った場合には輸血を行う)の立場をとります。

 

(4)児童や高齢者等に対する虐待(ネグレクト)が疑われる事案について

保護者の信仰等を理由に、児童に対して輸血など必要な医療を受けさせないことは、ネグレクトに該当すると考え、「宗教の信仰等を背景とする医療ネグレクトが疑われる事案への対応について (厚生労働省子供家庭局)」に従って、児童の生命・身体の安全の確保に努めます。

高齢者等への虐待の徴候を疑った場合には、患者様の保護に努め、地域包括支援センターや警察に通報します。

 

(5)身体拘束について

身体拘束は人間としての尊厳に関わる重大な問題である、と同時に身体的・精神的・社会的弊害をもたらします。
身体拘束の必要性があると判断された場合であっても、身体拘束以外の緩やかな手段が考えられればそれを選択するように努めます。
しかし、緊急時ややむを得ない場合には、以下の3つの条件を満たすことを確認し実施します。

① 切迫性(抑制しなければ、患者様本人または他の患者様等の生命にかかわる可能性がある場合)
② 非代替性(身体拘束を行う以外に代わる手段がない場合)
③ 一時性(必要なくなれば速やかに解除すること)

 

(6)終末期おける意思決定と医療について

終末期の医療・ケアについては、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(厚生労働省)」に従い、患者様やご家族と相談の上、患者様の意思に基づいた医療を行います。
また、可能な限り、疼痛やその他の不快な症状を緩和し、精神的・社会的援助を含めた総合的な医療・ケアを行います。

 

(7)心肺蘇生不要(DNAR)について

人生の終末期・老衰・救命不可能あるいは意識回復が見込めない場合には、当院の「心肺蘇生を行わない(DNAR)指示に関するガイドライン(2022年1月)」に基づき、患者様やご家族へ十分な説明をした上で、心肺蘇生術を行わない意思を示された場合は、その意思を尊重します。

 

(8)苦痛緩和のための鎮静について

終末期の耐えがたい苦痛を緩和するための鎮静については、多職種で安全性や倫理的妥当性を検討します。

 

(9)臓器提供・法的脳死判定について

厚生労働省の「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針を遵守して行います。
臓器提供の意思は、臓器提供意思表示カード、健康保健書・運転免許・マイナンバーカードの意思表示欄、その他の意思表示書類などで確認し尊重します。

 

(10)退院の拒否および暴力・迷惑行為、強制退院について

一般的に医師が入院治療を必要としない旨診断し、診断に基づき患者様に対し退院すべき旨の意思表示があったときは、特段の事由が認められない限り入院診療契約は終了すると考えられていますので、医師は退院を拒否する患者様および家族に対しても退院の方針を説明します。
患者様の行動が病院の秩序を著しく乱したり、患者様が医師・看護師の指示に従わず、医療業務が平穏に行われ なかったり、著しく支障を及ぼすと考えられる場合や威力業務妨害や脅迫、暴行などの犯罪行為にかかると思われる場合は、診療を拒否しうる「正当な理由」になると考えられますので、病院長が強制退院を勧告することがあります。
暴力行為等迷惑行為に対しては、適切に警察に連絡をします。

(11) 薬剤の適応外使用

治療上の必要性・有益性等の観点から、通常では医療保険の還付対象となっている医薬品、疾患、用法、用量の組み合わせの規定から逸脱して薬剤を使用する場合があります。その場合、院内の所定の手続きに従います。

(12)その他の倫理的問題

本臨床倫理指針の原則に従い判断しますが、判断が困難な場合には倫理委員会にて検討します。

 

参考資料

  • 「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省 平成 30 年 3 月改訂版)
  • 「宗教的輸血拒否に関するガイドライン」 (宗教的輸血拒否に関する合同委員会報告 平成20年2月)
  • 「宗教の信仰等を背景とする医療ネグレクトが疑われる事案への対応について」(厚生労働省子ども家庭局  令和5年3月31日)
  • 「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン〜3学会からの提言〜」(日本集中治療学会、日本救急医学会、日本循環器学会 平成26年11月4日)
  • 「DNAR(Do Not Resuscitation)の考え方」(日本集中治療学会倫理委員会 委員会報告 2017年)
  • 「Do Not Resuscitation(DNAR)指示の在り方についての勧告」(日本集中治療学会 委員会報告  2017年)
  • 「臓器の移植に関する法律」(法律第104号 平成9年7月16日)

 

令和6(2024)年4月1日
水戸協同病院 倫理委員会

 

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