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医療関係者の方へ2013年度フェロー 鈴木諭先生

水戸協同病院の1年間を振り返って

筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター
茨城県厚生連水戸協同病院総合診療科     鈴木諭

  私はこれまで初期研修、後期研修、その後のスタッフと、8年間群馬県の中小病院及び無床診療所で一般内科診療、家庭医療を中心とした医療を行っていた。高齢者を中心とした急性期病棟医療、慢性期外来、在宅訪問診療。医師としての経験年数を積むにつれ診療の幅は広がり、自分自身でマネージメントする事が増えてはいたが、ここ数年は自身のキャリアパスについて悩み、医師としてあるべき姿を模索していた。日々Playerとして日常診療を行う中で、家庭医を志して専門医はとったものの、今満足感を感じて行っている日常診療活動は当初志していた家庭医療とは若干異なる要素も含んでいるのではないかと考えていた。そして、それは家庭医療という枠組みではなく、病院総合医という枠組みに近いのだろうという結論に至った。

病院総合医としての研鑽をしたい。そう思ってから情報を求め、いくつかの病院を見学に行った後に、最終的に病院総合医の研鑽先として選択したのが、筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター・茨城県厚生連総合病院水戸協同病院である。「イチロー型の病院総合医を養成する」というコンセプトのもと、大学教官及び病院スタッフが一つになって後進教育を行っている病院に、強く引かれるものがあった。

実際に今、この1年間を振り返ってみて、その選択は正しかったと感じている。Academicな環境で一つ一つの診断と治療に深みを持たせる医療活動、教官及びスタッフ医師の人柄、多職種との良好な関係性、地域の中で求められる医療機関としての役割、勉強熱心で向学心が強いレジデント。私が学びたいと思っていた病院総合医、その理想の形の一つがここにあると感じた。そして、その理想の形が一つ一つの歯車が噛み合いながら良好に機能している病院であった。

私がこの1年間、水戸協同病院に在籍する事で、この地に何が残せたのかは分からない。フェローという立場で後進教育にも関わらせて貰えたが、実際の所、教える事より教わる事の方が多かったと思っている。ただ、その中でも自身の8年間の経験を元に、家庭医療的エッセンスを伝える事はできたのではないかとも考えている。医師患者関係の築き方、患者家族との調整、退院調整、地域の見方、そしてスッタフコミュニケーション。Academicさは無いかもしれないが、何れも医師として大切な要素。この1年間関わったレジデントに、間接的にでも伝えられたのであれば良かったと思う。

水戸協同病院の「イチロー型の病院総合医を養成する」というコンセプトは、Academicの追求だけではなく医師としての心も養成すること。教官及び各専門科スタッフの日常的なレジデントとの向き合い方や、業務外での医師間の交流の機会(みとのくプロレス、医局バーベキュー大会、同門会等々)を体感し、病院総合医としての理想の教育ができる環境が、ここ水戸にはあるのだと感じた。

4月から再び群馬の地に戻るが、これからも病院総合医養成の拠点として更に発展して行くであろう、筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター・茨城県厚生連総合病院水戸協同病院の魂を大切にしていこうと思う。1年間お世話になった方々に感謝し、振り返りを終わりとしたい。ありがとうございました。

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